2011年度原子核三者若手夏の学校

- 素粒子論パート -



研究会アブスト集 (18日 ポスターセッション)

研究会日程 17日前半 17日後半 18日前半 18日後半(ポスター) 20日前半 20日後半

1 磁場とウィルソンラインを用いた高次元模型におけるクォーク・レプトン質量行列の解析
氏名及川 茜(おいかわ あかね) 学年M1
所属早稲田大学先進理工学研究科 物理学及応用物理学専攻 中里研究室
概要
フレーバーの質量階層性を説明するうえで,余剰次元に磁場があり,トーラスコンパクト化されている模型からアプローチする。 10次元のU(8)super Yang-Mills理論から始め,Pati-Salamゲージ群に破るような磁場と,それをさらに破るウィルソンラインを考え, クォーク,レプトン,ヒッグスに対応する余剰次元における異なる波動関数を書き表す。 湯川相互作用項の4次元有効理論はこれらの波動関数で記述される。Δ(27)離散対称性のフレーバー構造を持ち, 世代数はΔ(27)のtripletに対応する。 ヒッグスに真空期待値を入れて質量行列を求め,クォークと荷電レプトンそれぞれの世代間質量比とCKM行列を再現する。
2 ワイルテンソルの電場・磁場成分(レビュー)
氏名万城 秀人(まんじょう ひでと) 学年M2
所属 山口大学大学院理工学研究科物理・情報専攻
概要
4次元時空にはリッチテンソルで定まらない共形曲率が存在し、リーマンテンソルにはワイルテンソルの自由度が存在する。 長年多くの研究者によって、ワイルテンソルの電場・磁場成分についての研究がなされてきた。 今回は特定の条件の元で定められたワイルテンソルの電場・磁場成分について論じた論文についてレヴューする。
3 N=4超対称ゲージ理論における、グルーオン散乱振幅 / Wilson loop / 相関関数 triality(レビュー)
氏名新居 慶太(にい けいた) 学年
所属名古屋大学E研
概要
 近年のAdS/CFT対応の発展の一つとしてAlday-Maldacenaによる強結合グルーオン振幅の計算が上げられる。 彼らの計算において、振幅の計算がWilson loopの計算と一致することが示唆された。その証拠として、ゲージ理論側で両者の物理量を計算することにより、弱結合側で一致することが示された。
 今日、その物理量の対応はある種の相関関数の計算とも一致することが分かっており、そこも含めてレビューする。 また、その対応をいかに拡張するかも議論する。
4 A Dilemma between Cosmology and Particle Physics (レビュー)
氏名寺田 隆広(てらだ たかひろ) 学年修士課程2年
所属 東京大学 理学系研究科
概要
超重力理論・超弦理論にはモジュライやグラヴィティーノといった場が含まれる。 多くの場合、これら長寿命の粒子の存在は宇宙論・宇宙観測と矛盾してしまう(宇宙論的モジュライ問題・グラヴィティーノ問題)。 これらの問題を起こさない為にグラヴィティーノの質量などに厳しい制限がついている。 モジュライやグラヴィティーノを作られにくくする、壊れやすくする、薄めるという戦略で問題を解決する研究がなされている。
5 brane titling and quiver gauge theory(レビュー)
氏名長谷川 知香(はせがわ ちか) 学年M1
所属 立教大学 理学研究科 物理学専攻 理論物理学研究室
概要
本レビューでは、ブレーンタイリング(brane tiling)が、2次元トーラスT^2上に描かれた2色グラフであり、N=1超対称箙ゲージ理論(quiver gauge theory)を研究する技術として知られていること、D5-braneとNS5-braneからなる複雑な系の情報を表すことについて概観することを目的とする。 本レビューは、山崎雅人氏の論文に基づく。
6 UFB/CCB方向からのMSSMパラメータへの制限
氏名高橋 翼(たかはし つばさ) 学年M2
所属 京都大学 基礎物理学研究所 素粒子論グループ
概要
Minimal Supersymmetric Standard Model (MSSM) は、 標準模型のもっともシンプルな超対称化模型であるが124個と非常に多くの自由パラメタを含んでいる。 そのパラメタの値によって、ポテンシャルの形は異なり、 場の真空期待値が無限大に落ち込んでしまったり、 Charge や Color の対称性を破る真空を含むポテンシャルになりうる。 そのような非現実的な状況が起きないという要請からMSSMのパラメタを制限する研究について紹介する。
7 インフレーションのメカニズム(レビュー)
氏名神野 隆介(じんの りゅうすけ) 学年M1
所属東京大学 理学系研究科
概要
インフレーションのメカニズムを概説した後、具体例としてヒッグスインフレーションを解説する
8 4次元重力インスタントン解の構成(レビュー)
氏名樋ノ上 和貴(ひのうえ かずき) 学年M2
所属 大阪市立大学大学院 理学研究科 数理物理研究室
概要
アインシュタイン方程式は一般には計量に関する非線型偏微分方程式であり、この方程式を解くための一般的な解法は知られていません。 通常用いる戦略の1つは対称性を仮定することです。今回はビアンキⅨモデルを仮定します。この時アインシュタイン方程式は2階の常微分方程式系ま で簡約化されます。 アインシュタイン計量$g$に対しそのワイル曲率が自己双対的であることと、さらにリッチ平坦であることを要求すると、その2階常微分方程式系は さらに1階常微分方程式系まで簡約化されることが知られています。 この1階常微分方程式系はリッチ平坦な自己双対方程式になっています。 リッチ平坦な自己双対方程式の解から定まる計量を重力インスタントと呼びます。 この自己双対方程式から求まるインスタントンとして、Eguchi-Hanson計量、Taub-NUT計量、Atiyah-Hitchin計量 が知られています。 ここでは特に、特別な物質場の入れ方をした場合にAtiyah-Hitchinタイプの解を構成し、それを真空の時の Atiyah-Hitchin解と比較します。
9 核子系有効場理論を用いた繰り込み群に基づく核子-核子散乱の解析
氏名榮田 達也(さかえだ たつや) 学年D2
所属九州大学素粒子理論研究室
概要
核子間の相互作用をパイオンを含む有効場理論で記述するとき、核子間の相互作用は、パイオンの交換によるものと、contact operatorで記述されるものとがある。核子間相互作用のうち、contact operatorで記述されるものにはパイ中間子の交換による、短距離の寄与も含まれていると考えられる。 Wilson流のくり込み群の解析により、contact operatorのうち、微分を含まないものは、relevantなoperatorであることがわかっている。この相互作用は非摂動論的に取り扱う必要がある。パイ中間子に関してもrelevantなcontact operatorに含まれる短距離の寄与と、ポテンシャルとして扱う長距離の寄与があり、短距離の寄与は非摂動論的に、長距離の寄与は摂動論的に取り扱い、分離して解析すべきであるという結果が得られている。 以上のことと、パイ中間子の寄与を短距離と長距離に分け、陽子-中性子散乱のphase shiftを解析した結果を述べる。
10 AdS/CFT対応とHolographic Superconductor(レビュー)
氏名野崎 雅弘 学年M2
所属京都大学基礎物理学研究所
概要
現在、AdS/CFT対応は物性理論など素粒子理論に留まらず様々な分野において注目を集めている。その様なAdS/CFT対応について、学んだことのない初心者に向けたレビューを行う。更に、物性理論への応用例の一つであるHolographic Superconductorにおいてどの様にAdS/CFT対応が用いられているか説明を行う。