2011年度原子核三者若手夏の学校

- 素粒子論パート -



研究会アブスト集 (20日後半)

研究会日程 17日前半 17日後半 18日前半 18日後半(ポスター) 20日前半 20日後半

15:20

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15:33
Bの物理の現状(レビュー)
氏名吉永 尊洸(よしなが たかひろ) 学年M2
所属東京大学大学院理学系研究科物理学専攻
概要
Bの物理は、標準模型の検証において重要な役割を演じてきた。また、標準模型を超える新しい物理の効果は、フレーバーを変える過程を通じて間接的に様々な粒子の崩壊現象に寄与し得る。 そのため、Bの崩壊を精密に調べることで、間接的に標準模型を超える物理を探求することができる。 現在、Bの物理は精密測定の時代に入りつつあり、それに伴い様々なBの崩壊で標準模型との不一致が示唆されている。 今回の発表では、Bの物理の有用性と、特に私が注目しているBの崩壊現象について紹介する。
15:34

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15:47
Long-lived Stau might be detected in the LHC
氏名岩本 祥 (いわもと しょう) 学年D2
所属東京大学理学系研究科 物理学専攻
概要
SUSYのモデルの中には,stau(tauのパートナー)がなかなか崩壊しないようなものがある。 stau ほどに重い粒子で長寿命なものは,これまでには知られていないので, stau が長生きだったらとても面白い。 例えば,寿命しだいでは stau は LHC の測定器の中で崩壊するのだけれど, その場合には「trackの折れ曲がり」というとても珍しいシグナルが検出できる[arXiv:1103.1881]。 というわけで,どういうモデルでstauが長寿命になるのか(理論)だとか, LHC実験で「trackの折れ曲がり」をどうやって見るのか(実験)だとかについて話そうと思っている。
15:48

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16:01
Higgs mechanism without Higgs potential in an extra dimension
氏名藤本 教寛 学年D1
所属神戸大学 理学研究科 物理学専攻 素粒子論研究室
概要
Higgs mechanismは標準模型において自発的対称性の破れを引き起こす役割を担うが、その実現には負の2乗質量項を手で導入する必要があった。今回我々は余剰次元の幾何として線分を持つ高次元ゲージ理論の枠組みにおいて、スカラー場の余剰次元方向に関する境界条件として一般的な境界条件を考察することにより、負の2乗質量項を導入することなしにHiggs mechanismを実現できることを見出した。この機構においてスカラー場の真空期待値は必ず余剰次元の座標依存性を持ち、余剰次元の半径や境界条件を指定するパラメータなどに依存した豊富な相構造を持つ。さらにこの枠組で、カイラルフェルミオン生成の謎やフェルミオンの質量階層性問題も解決できる可能性があることも時間があれば説明する。
16:02

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16:15
修正重力による宇宙モデルのシミューレションを用いた検証
氏名鈴木 隆之(すずき たかゆき) 学年D3
所属山口大学 大学院理工学研究科
概要
素粒子理論の研究者の間では、統一理論へのアプローチとして、超対称性理論が以前より盛んに議論されている。 そして、宇宙に多く存在するとされるダークマターの正体は超対称粒子ではないか言われている。 しかし、それらは未だに、実験的に観測される兆候がないのも実情である。
一方、一部の重力理論の研究者はダークマター、更にはダークエネルギー、インフレーションなどを素粒子論の拡張ではなく、重力理論の修正をもって整合的な説明を試みる。 スカラー・テンソル・ベクトル重力理論はJ.W.Moffat が考案した、ダークマターやダークエネルギーを仮定せずに宇宙進化を説明する修正重力理論の一つである(以下モファット重力と呼称)。 様々な修正重力のモデルが近年の精密な観測により次々と棄却されているが、多くの観測データとの一致をみるモファット重力はとても興味深いものである(Moffat, J. W., & Toth, V. T. 2009, Classical and Quantum Gravity, 26, 085002)。 一般に宇宙の構造形成には、ダークマターによる重力ポテンシャルが必要と考えられているが、モファット重力はこれについても、大規模なスケールで重力が強くなるものとして、バリオンのみで現在の宇宙構造を作り上げることができるとされる(Moffat, J. W., &Toth, V. T. 2011, arXiv:1104.2957)。 しかし、考案者自身の論文に於いては簡単な近似計算のみによる議論しかなされていない。 本研究ではこれをN体シミュレーションを用い精密に検証する。 国立天文台のCrayXT4や京都大学基礎物理研究所のSR16000 等のスーパーコンピュータを用い、100万粒子の多体計算を実行した。 発表では、モファット重力の宇宙構造形成の定性的な性質・標準宇宙モデルとの差異や判別をするために求められる観測精度等についてを論述したい。
16:16

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16:29
複数のmoduliをもつ5D SUGRAにおけるsoft parameterの解析
氏名山田 悠介(やまだ ゆうすけ) 学年M1
所属 早稲田大学 先進理工学研究科 物理学及応用物理学専攻
概要
標準理論では素粒子の世代間の質量階層性を説明することはできないが、これをmoduliというU(1)ゲージ場をもつS1/Z_2コンパクト化された5D SUGRAにおいてmoduliに対するU(1) chargeの違いから説明できることが先行研究から知られている。本研究では複数のmoduliがあるモデルを用いて、各flavorに対して moduliに対するchargeを決めることにより実験から測定されたquark、leptonの質量比やCKM行列を再現する。さらにその条件下で SUSYが破れる際に生じるscalar mass及びA term(soft parameter)を求めることができるので、これらと実験結果との整合性について考察していく。
16:30

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16:43
Gauge Higgs Unificationにおけるフレーバー混合
氏名田邊 和也(たなべ かずや) 学年D1
所属 神戸大学 理学研究科 物理学専攻 素粒子論研究室
概要
Gauge Higgs Unificationでは湯川相互作用は、高次元ゲージ場のゲージ相互作用の一部である。よって、この模型では湯川結合定数はすべてのフェルミオンに対して等しくなり、フレーバー混合は単純には起きなさそうである。本発表ではS^1/Z2にコンパクト化された5次元Gauge Higgs Unificationにおいて、バルク質量、ブレーンに局在化した質量を導入することで、フレーバー混合が実現できることを説明する。